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宙組「FLYING SAPA」梅芸感想

宙組 梅田芸術劇場公演「FLYING SAPA」

宙組さん、11日間お疲れさまでした。

梅芸行って来ました。
凄かった。なにより音と映像が宝塚見てるって感じしなくて驚いたし、視覚的にも聴覚的にも訴えかけてきてるのが新しいなと思った。芝居にも厚みがあって、宙組生1人1人の芝居力が凄くてたくさん考えさせられた。こんな世の中ではあるけども是非とも劇場で観て欲しい公演。

観てて1番思ったのは音。どこだったかな、たぶん対峙するシーンとかなんだけどずっと耳鳴りするようなきーんって音が響いてて。映像も映像だしこの不協和音に気持ち悪くなったのを覚えてる。(音響の問題だから聞こえるかは場所によると思うけど。日生はどうだろう??)
あと映像というか演出というか。はじめてミレナが過去思い出したときのシーン、舞台上でゆっくり動いてる過去の人たちも怖い。これぞフラッシュバック!!表現するのが上手いな!?
怖いと言えば2幕で2つあって。1つはサパに兵士を派遣するというニュースシーン、2つはミレナがミンナになるとこ。1つ目、背景に移る映像が"彷徨ってる人らしき影たち"なんだよね。ちゃんと大人も子供もいる。「取り残されてる人たちがこんなにいるんだよ~みんな怖かったよねもう大丈夫だよ~」みたいな?個人的にはサパの人たちみんなを"影"で同一視してるのが怖いけどな。個性なんていらないってか。配信で映んなくてまじかよと思ったとこ。
2つ目、ミレナがミンナになるとこ。オバクとブコビッチが対峙してる最中、あの布の中で行われてること。最初布かぶるときに何人か真ん中に入ってて。しばらくのあいだへその緒は動くし布の色も点滅してる。次第にへその緒動かなくなり布も緑(へその緒?)の色になって止まるんだけど、その瞬間が「ミレナがミンナになった」ことで。オバクがその変化に全く気づかないように自分に意識向けて時間稼ぐブコビッチが見事だなとかそんなことを考えちゃう日もあった。最初この意味が分かんなくて、"ミンナ"役で出てくるキャラクターたちの違い(動いてる=融合してる)のは誰か?なんか関係ある?とか考えちゃって凄い怖かった。(動いてるのはその時点でへその緒が起動してる=生きてる人なのかな?とか。)
宝塚の演出で今までこんな風に"恐怖"の感想持ったことないからやっぱり特殊なんだろうな。テーマ重いけどこういう作品も好き(序盤に伏線張り巡らして最後に回収していく小説が大好きなんだけどサパも似てると思った)

以下感想という名の考察もどき。
タオカの存在が衝撃的すぎてそのことしか考えられなくなってるのでちょっとみんなと視点違うかも。
ネタバレ満載、視点ぶれっぶれ。
すごい長いのに結論は出てません。

🌟梅芸観劇
2幕でペレルマンがタオカ撃った後に「人間とは一皮むけばこうだ」って冷たく言い捨てる。その言葉がずっと引っかかっていて。「自分だって人間なのになんでこんな風に言うんだろう?」と不思議だった。

最初の場面、兵士に追われ逃げるタオカには恐怖と怒りの感情の比率が多いと思った。記憶を消される場面で「俺はタオカだ!日本人だ!」と自分の持って生まれた個性を叫んでるけど、それがポルンカでは許されないこと。記憶を消されることに恐怖を覚えるのも至極当然なんだけど、あのセットの中では「異端だ」って見えてくるから機械的音声って怖い。
記憶消されて30070プログラム受けて。タルコフの部屋でテレビを見て自分の体が勝手に同調するのにびっくりしてるのが、表情と微妙にずれてる動きから伝わってきて…手に持ってたコーヒーを何度も何度もあおるのも正気に戻ろうとしてるのかなって、無意識的な反抗精神かなと思えて…。この時には疑問に答えてくれる人もいるし、タオカ本人にまだ疑問に思う力がある。銃?を与えられても嬉しそうに見るだけで、それをぶっ放そうとは思ってなさそう。科学の進歩をしても1回ではあんまり強い刺激を与えられないのかなと思った(もしこの最初から強く刺激を与えないことが、ロバートキンのへその緒デバイスに転用することに対しての「倫理的に許されない」への答えなのだとしたら、ブコビッチもちゃんと彼(=ロバートキン)のことを思ってるってことだよね。と思うとなんだか泣けてくる。)

ミレナの部屋。その後再度記憶を消される場面のタオカはなんの反論もしなくて。でも「あの女の顔は覚えときたかったが…」で彼にとって楽しい、ミレナからすればクズなことを考えているんだろうなと読めてタオカお前…って思った。回想シーンで戦争の話とか出てくるし、そういうシーンもあるから余計にゾワゾワする。
過去のタオカのことも気になってくる。「差別する側」だったのに「差別される側」になったのか、それとも最初から「差別される側」だったけど才能や能力があったから乗れたのか。ブコビッチが「金持ちばっかりが乗っている船になぜ自分が乗れたのか」に対して「科学者だったから」と答えてるけど、もしかしてタオカもそっち系統?と思えてきて一瞬思考が停止した。それだったら冒頭あんなに吠えてたのにも納得いくけど深読みしすぎ?

再度記憶を消されて次に現れた2幕のテレビインタビューシーンの将軍30071は言わされてる感半端なくて、まるでアンドロイドみたいだと思う。だけど凄いハマってるから元々軍人だったのかなとも読める。
この場面で思うのは「記憶を消す」ことについて。2幕で記憶を取り戻して苦しむオバクに向かってブコビッチが「それが怒りと苦しみだ!」みたいなことを言う。昔々、幼いミレナにブコビッチが施したのは「辛い過去を忘れる」治療だった。あの日から「記憶を消す」という治療の原点が変わってないのだとしたら、タオカに施されたのも同じものだと思う。差別されてきた「辛い過去」を忘れさせるもの。でも問題点は、それは2幕のタオカは2回も受けているということで。薬だって適切な使用量を守らないと毒になるし、脳神経ならなおさら倫理的にも精神的にもよろしくない。その上タオカにとっての「喜」「楽」であろう「銃器」を手に持っている。こんな状況下で格好の獲物が目の前にいる。こんなのタガが外れるに決まってるのでは?
アンドロイドみたいに機械だった将軍30071がタルコフを銃で撃ったことで「本来の自分の思想」を無意識的に思い出し、銃をぶっ放すことに強い強い快感を覚えはじめたからペレルマンに撃たれたのかなって思った。恐怖の気持ちはないし自分でも何故こんなに楽しいのか分からないから、一度タガが外れたら狂い続けるのみで。最初タルコフ達追い詰めた時よりも殺される直前のタオカの方が狂ってるように見えるのは、きっとどんどん「喜」と「楽」の感情が高鳴っていたからなのかなって。ミレナを見て「好みのタイプだったんだが」みたいなこと言うのもあくどい表情浮かべるのも、30070との対比で自分を取り戻しつつある比喩なのかなとも捉えられるし。人間そう簡単には変われないんだな、そういう意味でのペレルマンのあの言葉だったのかなと思うとすっと理解ができた。

記憶は消せても本質的な部分や性格はそう簡単に変えられないんだなと一連のタオカを見てきて感じた。他の兵士の服は真っ白なのに、1人だけずっと光を反射するパネルのついた服着てるのもまた何かの伏線なのかなと思った。

だから攻撃的な思想を持つ人間をブコビッチは表面化する前に排除してきたし、「治療」してきたんだと思う。平和のために、自分たち「差別される側」が生き残るために。その政策が気にくわなかった元々の立場が上の人や同じく差別されてきた人達がサパに逃げて街ができたのかな。実際、違法ホテルにいる人達って身なり整った人ばっかりだもんね?テウダたちは自ら望んでサパに来たから違うけど富裕層ばかりだと思う、あの違法ホテルは特に。快楽に支配された場所、それがいつまで続くかなんてわからないけどそれが心地いい。ある意味あの場所も現状に甘えて前に進もうとしない人達への警告?みたいにも思えてきていて。ミレナとオバクの登場により「前に進んだ」彼らは外の世界で苦しみと闘うけど、今まで知らなかった感情や思いを共有してより人間らしさを取り戻していったから。
辛くて苦しい過去があっても立ち向かって前に進もう。困難にぶつかってもその先には希望がある。そういう強いメッセージ性を感じた。

ここまで書いてきてあれだけど、もしブコビッチが全部知ってた上でこの騒動を引き起こしたんだとしたら怖いよね。掌で転がされていた的な話。無個性な世界はいつまでも続かないって、人間どうしたって変われないと分かっていたからこそミンナを開発して。サパの存在を知りつつも制御できなかったからズーピンを派遣して監視させておいて。完成が近づきもう自分の人生も終わらせようと思っていた、それならミレナに殺されたいと時を待っていて。彼女が危険思考を持つことに気づきながらもあえて逃がし、色々吸収させた上で再度呼び戻す。タオカを2回も「治療」して暴れさせて絶対に連れて帰れるように仕向ける。
でも追撃者に「あえて」差別思想のある攻撃的なタオカを選んだこと、あえてオバクと同じサポーターの所に放り込んだってことの意味がまだイマイチ納得できていなくて。もしかしてオバクとタオカは強制的に同じ夢を見せられた?タオカをこのタイミングで捕まえさせて治療したのはミレナを逃がすため?一回オバクとミレナに会わせたのはタオカの中でミレナへの思いを植え付けておくため?ブコビッチが精神干渉してミレナをサパに向かわせた?ブコビッチは何を期待していたのか、その期待は果たされたのかっていうのがこの説だと結論付けられなくてモヤモヤしてる。

ひとまずタオカは「人間はそう簡単に変われない」という象徴であり、「同調意識への警告」でもあるのかなと思う。
突出した個性は今の社会の中では異端であり、それが批判対象に繋がることあるし、人生辛くなって現状維持に留まることも多い。生まれた場所、民族だけで差別されることもある。登場人物1人1人が様々な人種だと思うけど、一番暴れまわるタオカが日本人なとこにさらなる重みを感じる。


🌟配信映像見て
タオカはどこで捕まったんだろうなと思ってきた。すぐ直前にノアが登場するからサパのクレーター?でもそれならサパ行くときにオバクが反応するはず。あれは初見の反応、つまり惑星ポルンカ内にも隠れる場所がある……?
GPS埋め込みだろうしポルンカ内なら逃げきれないと思うけど何処に潜伏してたんだろ。普段はサパにいてポルンカにきた時に捕まった??あとどのタイミングで捕まえたのかが気になってて。「製造した」ことが違反だって言ってたから現行犯逮捕?それじゃ遅くない?
オバクか夢の中で探知し捕まえたクランケがタオカで、「お前(オバク)が眠ったあと運び込まれた」兵士もタオカ。漂白され30070として初めて入ったのがそのあとのミレナの夢、という解釈であってるのかな。
そして「タオカがクランケと呼ばれていたのはいつからなのか」という新たな疑問。クランケとかそういう通り名がない人たちはコード番号でずっと管理されて呼ばれてるのかな。
兵士にしますと聞いたときタオカがやけに焦っていたのはなんでなんだろう。それにも理由があるのかな?

タオカは「地球」というワードに強く興味を示してる。彼の口からでてくる疑問はだいたい地球と今の状況への皮肉な気がする。
案外30070は「怒りや苦しみ」の感情は忘れていても、自分の民族性(誇り)への気持ちが無意識的に残ってるのでは。あまりにも激しい感情だから薄めることしか出来なかったのでは、と見てる。何度漂白されてもタオカの服が真っ白にならないのも、基本紫だけど光の加減でニジイロに光るのも伏線?(紫って「個性的」という意味もあるみたいで。単純な衣装だったら悲しいので伏線であって欲しい)
何故真っ白にならないか何故忘れられないのか、それはその誇りが個性が彼にとっての悲しい過去ではないからかな。それか本人の本質的な思想だから。この説で行くと地球時代のタオカはそこまで差別・抑制されて無さそうだし(むしろしてる側っぽいし)、彼の攻撃的思考はポルンカに来てから生成されたものと考えることも出来るんだよね。
それかあれか、15周年特番でやってた、へその緒デバイスに対して最初は抵抗をしていた人たちが手のひら返してへその緒を求めたって話に繋がる?その結果人々は水星で生きられるようになったけど自分達の個性や自由が奪われ、それに対するヘイト的感情が高まったから抵抗し始めた。タオカは銃器を製造し、吠え、反抗しようとして捕まり漂白された。日本人だし扱いに慣れてるし地球時代は軍人とかだったのかな?もし原点がそこならば強い愛国心持ってても頷けるし、銃を撃つことに戸惑いがないのも、自分より弱い立場の人への差別意識があるのも女性への考え方も悲しいけど分かる。ミレナみたいな子がタイプって言うのも「自分に抵抗しない(好きにできそう)」という意味なのかなって勝手に解釈してしまう。
地球時代の立場がマジで分からん。1は勝利国として船に乗ったらもっと上がいた、船を降りたらポルンカ政府に支配されて自分達のアイデンティティを取り上げられ、上の人間(ペレルマンとか)のような人達に「差別」だと思うような仕打ちを受けて………みたいなタイプ。
2は敗戦国だったけど立場は低かったけど才能があったから乗れたブコビッチタイプ。
何が正しいのか分からなくなってきた 。

2回目の漂白プログラムで「潔い(?)殉職のかわりに将軍の地位を与えましょう」と言うスポークスパーソン。この「地位」に関する特別プログラムがあるのかなあ。

ペレルマン1幕ラスト台詞が「兵士どもをお借りしたい」だったのが衝撃的だった。完全に武力で制圧しようとしてるし使う側の発言してる。そういえばクリープも「難民ブコビッチふぜいが」みたいなこと言ってたし、科学者だからこその差別意識?自分達が上だ!みたいな思想があるのかな。(じゃあなんでグリープはこんなとこに逃げてきたの?とも思うけど。ペレルマンとの違いってなんだろう??)

そのあと30071撃って「人間は一皮むけばこうだ」「こればっかり「は」統括に共感する」と言う。
個性も思想も同一化してる世界のはずなのに根本的なところで仲間割れ起きてんじゃん……。ブコビッチは身体的懲罰を禁止してるけどペレルマンは逆なんだなと。こういうのを見るにつれて、「本当にお前はミレナを愛しているのか??」という気持ちになるんだけど私だけかな。
なんか自分に酔ってるって感じする。統括の娘と結婚して自分がトップに!!みたいな。30071を撃つのも「自分の行動の邪魔をするから」でしょ?同じ立場の「人」だと明らかに見てない。大概彼もタオカの言うところの「差別主義者」なのかなと思ってしまって。皆人間同じじゃん。皆変われない。
もしかして10年もブコビッチが人に会わなかったのって、「人間変われない」とわかっていたからなのかなと。親友であるロバートキンを殺さなければいけなかった、そのことをずっと気にかけていたから説。